都市農村交流コーディネーター入門

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4. 都市農村コーディネーターの仕事

第2章で農村の課題、第3章で都市の課題を見ました。

 

両者は、それぞれ異なった課題を持っており、違うニーズを持っています。つまり、農村は、都市の経済を必要としており都市は、農村の生命を必要としているのです。この両者を結び付けるのが、都市農村交流コーディネーターの仕事です。

 

 

4.1 都市農村交流コーディネーターの難しさ

「都市が農村を必要とし、農村が都市を必要としているなら、結び付けるのは簡単ではないか」と思うかもしれません。しかし、注意深く考えてみてください。農村と都市が相手を必要とする理由、ニーズは大きく異なっているのです。

 

都市住民が「癒し」を求めて田舎に行きます。しかし、田舎は農村の住民にとっては毎日、仕事をしている場です。“職場”で、お客さんを短時間なら歓迎できても、長時間は無理です。一方で、農村は「輸入品などと比較して高い値段でも田舎のものを買って欲しい」と思っています。しかし、都市の経済競争が激しくなる中で、都市住民は毎日食べる食料品には安さを求めています。

 

このように相手を求めながらも、求めている内容が違うところを、どのようにコーディネートするか、それが都市農村コーディネーターの仕事の重要さでもあり、難しさでもあります。

 

 

4.2 都市農村交流コーディネーターの仕事

都市農村交流コーディネーターの仕事を具体的にイメージするために、「えがおつなげて」で取り組んでいる都市農村交流コーディネーター事業を紹介します。

 

1)体験交流
都市住民が農村に出会い、触れる第一歩となる体験交流の企画・広報・運営を行います。

  • 都市農村交流キャンプ」では、みずがき山のふもとの農村でのキャンプで、親子で農業や農村に親しむ体験を提供しています。
  • 「大豆をつくろう」では、大豆の種まき、草取り、収穫、大豆から味噌をつくる行程までを体験できます。豆から育てた手前味噌は格別です。
  • 林業・大工仕事を体験する「山仕事塾」では、地元で調達した資材を使い、伝統的な技術で土壁の小屋作ります。
  • その他、山菜採り、きのこ採り、登山なども、農村に親しむ貴重な機会です。

2)労働交流
都市住民が農地の維持・活用・開拓に貢献できるプログラムを企画・運営します。農村のコーディネートとボランティアのコーディネートの双方が必要です。

  • 「えがおファームの農作業のコーディネート」では、全国から集まったボランティアたちが、遊休農地約3haを復活させ、大豆を中心に野菜全般を農薬化学肥料を使わず栽培しています。
  • 「グリーンツーリズムのスタッフ」は、農村を活用した自然体験をサポートします。当日のプログラム進行のお手伝いや準備、片付けなどに携わる人たちを、どうマネジメントするかという力が求められます。

3)産業交流
農村の経済性を高める上で、都市の産業との交流は不可欠です。産業構造やビジネスを理解し、プロジェクトを生み出し、事業展開をコーディネートします。

  • 「食産業と連携した加工品開発」では、遊休農地を活用して、食品産業の原料である農産物を企業と連携しながら栽培し、なおかつ、食の特産品開発のためのワークショップを行い、地域の特産品を開発します。東京の洋菓子店と連携したカボチャの生産からケーキの開発、山梨の和菓子店と連携した青大豆の生産から豆大福の開発といった活動です。
  • 「企業との事業連携」では、企業の農村でのCSR(社会貢献)活動をコーデイネートする活動を行っています。東京の商社と連携し、社員が遊休農地に大豆の種を蒔き、収穫した大豆で味噌をつくる。こういった活動を通じて、農村の遊休農地の新たな活用を、企業との連携で行っています。
  • 「里山資源と建築との産業交流」では、在来工法による大工実習など、里山資源の活用について共同開発を行っています。

4)学習研究交流
農村のフィールドを次世代技術の研究や教育の場として活かしていくためのコーディネートを行います。

  • 「自然エネルギー資源開発」では、大学との共同研究により、北杜市の豊富な水資源、日照時間(全国1位)、木材などをエネルギーとして活用し、自然エネルギーによる地域エネルギー自給のための技術開発に取り組んでいます。マイクロ水力発電、バイオマスなどの実績があります。
  • 「黒森ゼミナール」は、大学・NPO・地域の学習交流の事例です。学生や先生がフィールド調査、エネルギー資源調査を行い、それを基に地域の将来像を議論するワークショップを開発しました
  • 関東ツーリズム大学」は、関東甲信越地区の様々な都市農村交流のフィールドと連携し、次世代の人材を育てるプログラムです。

5)その他の交流
その他、様々な交流に取り組んでいます。

  • 「政策交流」では、農村での実践経験を、中央省庁・自治体の政策として活用していただくために、提言を行っています。
  • 「多文化交流」では、韓国、台湾、アメリカ、フランス、ルーマニア、フィンランド、インド等、たくさんの国からの訪問者が農村文化を体験しています。


この他にも、どんどんと新しい課題やニーズが浮かび上がる中、様々な活動が新しく生まれてきています。

 

地域が異なれば、異なる状況・ニーズがあり、そこにも新しい可能性があるでしょう。

 

 

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