結果報告【八ヶ岳の自然と文化を巡る視察バスツアー】 of 特定非営利活動法人えがおつなげて

■ みずがき山自然公園

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まず訪れたのは、みずがき山自然公園。平成13年に開催された「第52回全国植樹祭」会場跡地を利用して整備されたこの公園は、日本百名山のひとつ瑞牆山を目前にのぞむ絶景の公園です。新宿から3時間の移動で一変した景色に、バスを降りてからしばし見とれる参加者の姿も見受けられました。岩がごつごつした特異な景観をもつ瑞牆山を前に、まずは参加者全員、深呼吸をしました。

■ 民宿『五郎舎』

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昼食は、増富地区の民宿『五郎舎』さんでいただきました。増富の名産「花豆」や、フキの煮物、ジャガイモのスープなど、地元の食材を使った料理は他では食べられないものばかり。物珍しさも相まって、食材から添えられた葉っぱに至るまで、質問が飛び交いました。


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■ えがおファーム

午後からは、増富地区黒森集落にある「えがおファーム」の視察です。NPO法人えがおつなげてが、ボランティアや企業の社員の力を借りながら耕作放棄地を甦らせ、現在では青大豆や花豆など、様々な農作物の栽培を行っています。持続可能な農業を目指し、実験的取り組みを行う「えがおファーム」の栽培方法や、農産物の販売方法、企業との連携の手法など、活発な議論となりました。LinkIcon

■ 神戸集落

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山あいの斜面にひっそりとたたずむ増富地区の神戸集落。ここで参加者を待ち受けたのは、移動スーパーマーケットから流れる明るい音楽でした。移動販売を久しぶりに見た人から初めて見た人まで、即座に写真撮影会となりました。これも、スーパーが遠く、交通手段が限られた集落で、高齢者の方の買い物の負担を減らすための過疎地ならではのサービスです。



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神戸集落の山道を登っていくと、やはり目立つのが空き家です。ペネロペさんは、フィリピンと比べてあまりの人の少なさを指摘し、少し衝撃を受けたようです。

■ 旧増富中学校

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神戸集落を登りきった場所にあるのが旧増富中学校です。全盛期には240名もの生徒が通う学校でしたが、平成15年に廃校となりました。趣のある校舎は映画やテレビドラマのロケ地としてもたびたび使われており、現在は墨彩画家の工藤耀日さんにより美術館として再生されています。



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郷愁を誘う木造の校舎に、体育館や教室、廊下まで一面に展示された工藤耀日さんの墨彩画が新たな命を吹き込み、地域再生の新たな可能性を感じさせています。

■ 大規模太陽光発電施設

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増富中学校のあとは、再びバスで30分程移動し、北杜市の中央部へと移動。「景色が変わった」と参加者からも声が上がりましたが、八ヶ岳山麓の緩やかな傾斜地に、水田、リンゴなどの果樹園が広がります。その北杜市のまさに中心部にあるのが、北杜市とNTTファシリティーズが共同して、大規模太陽光発電システムの普及拡大に向けた実証研究を行う「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究北杜サイト」です。


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ここでは、種類数としては世界一となる、27種類の太陽電池を導入し、発電特性を比較・評価するとともに、常に変化する太陽光発電からの電力が電力系統に悪影響を及ぼさないよう、研究を進めています。広大な敷地に様々な太陽光パネルが並ぶ光景は圧巻で、1時間前に見た山間の神戸集落との違いに驚きます。しかし、この広い敷地も実は耕作放棄地となっていた農地で、まさに遊休資源の活用事例といえるでしょう。ここでは、傾斜角度と発電電力量の関係や、各社の太陽光発電パネルの特徴に、参加者から鋭い質問が飛び交いました。

■ 村山六ヶ村堰水力発電所

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最後の視察先となったのが、農林水産省の疎水百選にも選ばれた「村山六ヶ村堰」の農業用水を利用した水力発電所「村山六ヶ村堰水力発電所」です。




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青い水車はチェコ製のもので、形がかたつむり(でんでん虫)に似ていることから「クリーンでんでん」という愛称が付けられています。見た目は可愛らしいものですが、水の流れ落ちる力のみを利用して年間で一般家庭約550軒相当の発電量があります。農村では身近な用水路に秘められた可能性に改めて気づくとともに、これをいかに普及させていくかについて議論がなされました。


今回は盛りだくさんすぎて駆け足のツアーとなりましたが、八ヶ岳山麓の様々な顔を見てもらうことで、「エコビレッジ八ヶ岳」の可能性を感じていただけたと思います。この多様な資源を活かして、どのようなエコビレッジを作り上げていくか、これからも皆さんにアイデアをいただきながら、「エコビレッジ八ヶ岳」を進めていきたいと思います。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

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2010年5月31日、この新たなエコビレッジのはじまりのイベントとして、「エコビレッジ八ヶ岳 国際ミーティング」を開催します。
国内外のゲスト、都市と地方、地域内外の住民が集まり、農山村から発信する新たなエコビレッジの可能性を語り合う場にしたいと思います。
また、当日は、八ヶ岳山麓の資源を体感する「エコビレッジ八ヶ岳 視察ツアー」も開催します。
新たな田園文化の創造に取り組む皆さま、元気のある農村を応援する皆さまのご参加を心からお待ちしています。



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 八ヶ岳山麓に位置する山梨県北杜市は、ゆたかな森林資源と3つの名水百選に代表される豊富な水資源に恵まれた自然豊かな地域です。また、日本一を誇る日照時間のもと、県内で最大の水田面積を有するなど、農業の盛んな地域でもあります。しかし、過疎・高齢化が進むなかで、農業や林業の担い手も少なくなり、遊休農地や空き家、整備されなくなった森林も目立つようになりました。

 このような遊休資源を活用すべく、「特定非営利活動法人えがおつなげて」では、都市から訪れるボランティアや企業の方々の協力のもと、限界集落となっていた北杜市増富地区の遊休農地3haを再生し、都市農村交流活動の拠点としてきました。しかし、北杜市内にはまだ700haを超える遊休農地が残されています。

 八ヶ岳山麓の豊かな資源、すなわち太陽光や河川、森林といった自然資源や、農地や空き家といった遊休資源を活用するために、私たちは八ヶ岳山麓の北杜市、さらには韮崎市を含む広大なエリアをひとつのエコビレッジとして、環境に負荷の少ない地域社会を作りたいと考えています。地域の文化、歴史、芸術を活かし、地域内外の人々の交流を活発にして、地域主体の元気な社会づくりを目指しています。