

ある土地は稲穂が育ち、
ある土地は山菜に事欠かず、
ある土地はリンゴがたわわになる。
農耕民族であった私たちの祖先は、季節感を意識するほかにも、
自分の暮らす土地・風土に合わせて、その地が育む作物を収穫してきた。
大地に寄り添いながら生活していたからこそ、
自分たちの土地で実を成らせる作物を、大いに理解していたのだろう。
その土地ならではの作物を収穫すると、
土地の女性たちは見事な魔法をかけてきた。
そうして生まれた、郷土の伝統の味。
それは、同時に日本の味でもあり、家庭の味でもある。
“美味しい料理で、家族が幸せでいられますように”。
“地域に、健やかな笑顔が咲きますように”。
その想いは、郷土料理の最高の隠し味。
いつまでも大切にしたい、代々受け継がれてきた、温かい母の手。
日本が誇るべき、四季。
太陰暦で日を数えていたその昔、人々は四季をさらに6つに分けた
「二十四節気」で、一年を過ごしていた。
今よりもっと、季節と密な関係だったと窺える。
その季節を、味覚でも感じてきた。
その時季に収穫した作物を食するコト。
それは、自然の巡りゆえか、偶然の必然なのか、人間の身体が自然に求めるコト。
春に採れる山菜などの苦味が多いものは、春の暖かさでのぼせる身体を調整する。
トマトなど水分の多い夏野菜は身体を冷やし、
秋はでんぷん質の多い栗や芋などで冬に備えて脂肪を作り、
冬に採れる根野菜は身体を温めてくれる。
かつての人々は自然の法則に従い、季節に添った作物を器に盛り、
旬の味で季節を感じてきた。
それは、日本人の生きる知恵、そして、自然と調和して生きる歓びでもある。